アレルギー性皮膚炎のワンちゃんの治療例
皮膚病の治療は、根気が必要です。
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過去に治療させて頂き、飼い主様に掲載の許可を頂いたワンちゃんの一例です。



ボストンテリア ピノちゃん 11歳。体重10.5kg 去勢おす。
2歳ごろより、だんだんと全身のかゆみがはじまる。夏季はとくにかゆみがひどいが
その他の季節でも基本的にはずっとかゆい。

抗生物質、ステロイド剤と抗ヒスタミン剤の合剤、シャンプー、処方食などで治療。
ステロイド剤と抗ヒスタミン剤の合剤を飲んでいるときはかゆみは改善されるが、
肝臓への負担がかかり、副作用が重大になり中止。
大学病院への紹介を受けるが、同様の治療方針に漢方薬、免疫抑制剤(シクロスポリン)
を追加処方されるも改善なし。
他院にて、アロマオイルとビタミン剤を処方されるも改善なし。

飼い主さんは、血が出るほど掻いて寝られないワンちゃんが見ていられない、と
悲壮感をお持ちでした。また、投薬、処方食、シャンプーなど、獣医師の指示を
しっかり守る方でした。


体格 中肉 全身に激しいかゆみ、炎症、発赤、ふけ。
皮膚を触ると「全体的に熱い」

四肢端、背中の一部、臀部および尾部の脱毛、象皮様変化。
腹部、色素沈着重度。
前胸部、四肢、背部を中心に、湿疹のような毛包炎が散在。
化膿性外耳炎あり。

皮膚検査 外部寄生虫 陰性  真菌 陰性
血液検査 好酸球数の上昇 アルブミンの低下 甲状腺ホルモンの低下

治療経過
これまでの治療で飼い主さんは、
「皮膚炎はとにかくシャンプー」
「アレルギーにはアレルギー用処方食」
「ステロイドは危険、悪いもの」
と学習されていました。

このワンちゃんは、ハウスダストと、もともといる皮膚の細菌
(常在菌)に対するアレルギーの可能性が強いことを説明。

アトピー体質はもともと皮膚の構造が壊れていてハウスダストや常在菌が入り込みやすいこと、去勢手術の影響で2次的に甲状腺ホルモンが低下している可能性が強いこと、これまでのステロイド剤治療の影響で、ワンちゃんがもともと体の中にあるステロイドホルモンが出にくくなっているため、ステロイド剤はどうしても少量必要なこと、象のような皮膚はあくまで長い間の炎症の影響で変化していて、シャンプーでは改善しないこと、などを説明。

また、本格的な食物アレルギーが疑われない限り、フードは栄養の付くものであればよい、とコメント。

おしりや四肢の皮膚が、象のように変化している。にぎると、炎症で「熱い感触」がある。
ステロイド剤・抗アレルギー薬数種類
ビタミン・ミネラル・強肝剤
甲状腺ホルモン剤
抗生物質

0.01mg単位で体重にあわせ複合処方
1日3回の投薬を指示。


飲み薬はやめると必ず再発するので、絶対にやめないこと、薬の成分は、ワンちゃんの症状を見ながらだんだん最適な量まで減らしていくことを説明。

治療開始3週間、皮膚炎は消退している。
治療開始して3ヶ月。

「すやすやと寝られるようになった」
「長年のひどい皮膚炎から開放された」
「毎日シャンプーしてたのに治らなかったのが、シャンプーしなくてもふけが出なくなった、ガサガサで象のようにぶ厚かった皮膚が柔らかくなった」


と大変喜んでおられまました。
残念ながら、完全に脱毛し被毛が生えてこない部分もありますが、総じて皮膚は改善しており、パッと見て
「みすぼらしかったボストンテリア」
から
「ふつうのボストンテリア」
になったと飼い主さんに言って頂けました。

このワンちゃんの治療は、私がお手伝いで勤務した病院でのものです。現在も、その病院にて、副作用を監視して頂きながら治療は継続中しておられます。

アトピー体質はもともと皮膚の作りが壊れやすくなっています。。
壊れた皮膚はアレルギー症状が非常に出やすく、根本的には体質的な改善が必要ですが、なかなか達成できるものではありません。

皮膚の炎症反応を抑え、皮膚に栄養を行きわたらせ、保湿力や抵抗力をつけさせながら、副作用が出ない最適な量で、継続した治療を根気よく行うことがなにより大切です


アレルギー性皮膚炎に限らず、飼い主さんにとってもワンちゃんにとっても、皮膚病は見た目も症状もつらいものです。皮膚病のでお悩みのワンちゃんのお役に立てられれば幸いです。


背中はまだ薄いが、全体的にしっかりした毛が生えてきた。

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